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室生犀星「結婚者の手記」

室生犀星の「深夜の人・結婚者の手記」を借りた。
講談社文芸文庫のシリーズはとても趣味のいいものだが、これは1500円。他の作家についても、文庫にしては高すぎるのが難点なので図書館から借りるしかない。
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以下、目次。
「第一章 結婚について 夫婦について/第二章 友について 芥川君について/第三章 生について 死について/解説 高瀬真理子/年譜 星野晃一/著者目録 室生朝子」
「結婚者の手記 『あるいは宇宙の一部』」より、抜粋。
「ある日、妻は買物からかえってきて、
『あなた、猫を飼ったらどう。通りのお菓子屋にそりゃきれいな猫がいますの。(略)』
と、息せきして言った。
『きれいな猫ならいいね。くれるのかい。』
『え。喜んでくれますわ。三毛でずいぶん大きくなっていますの。(略)』
と、もう表へ出て行って、袂のなかをふくらがして帰ってきた。
『いい猫でしょう。』
と袂から出した。一疋の三毛猫で、かなり大きい悧巧そうな顔をしていた。その目のまるいのや、形の小さいのが、いかにも可愛げな姿をしていた。両手の掌におさまるほど、まだほんの子供であった。
 妻はどこからか砂をもってきて、ふん箱をこさえたり、ちりめんの紅い布片で首球をつくったり、ち、ち、ち、と鳴る鈴をつけたりした。それがいかにも飼猫らしい優しさ賑やかさを加えて、そこらを飛んであるいた。」
『犬と喧嘩しないかな。』というと、
『わたし、よくならしますわ。』
と言って、その小さい猫を抱いて、クロのねているところへ持って行った。そしてクロの深い毛並で温まった腹のところへ猫をうまく抱かせた。クロはすぐ異種の動物の匂いをかぐと唸り出したのを妻はあたまを叩いた。猫はまだ子供だったので、ふしぎそうにクロの匂いをかいでいたが、しまいにはクロの尾にじゃれついた。
『毎日一ぺんずつこうしてやると、しまいには仲よくなりますよ。』
と、妻は必然的に仲よしになるもののように信じているらしい口調で言った。
 それから毎日、妻はこの小猫を犬に抱かせたり、背にのせたり、(略)この異種の動物を近づけ親しませていた。
(略)クロはもう唸らなかったばかりではなく、平気で猫を自分の胸のところで抱いてはねむっていた。
一つは黒い大きいからだであるにくらべて、一つは小さく三毛だったので、それがよく抱き合ってねむっているのを見ると、まるで親子のようでもあった。」
「酒屋が来て、犬と猫と抱き合っているのを見て、びっくりしたような顔をして、
『よく馴れたものですね。(略)』
と言って感心していた。
『小さいときから抱きっこさせてあったものですから。』
と、妻はいくらか自分が馴らしたのを内心誇るらしい顔をして言った。
 それほど彼等はなれ合っていて、(略)家の中を自由に横行している猫は、いつの間にか犬よりも権威を見せていたばかりでなく、犬の方でも何かしら猫が一段高いところにいることを知っていた。
ある日、妻が、
『経師屋さんにね、猫と白鼠とを飼ってあって、それが二疋で遊んでいましたよ。猫と鼠とは妙ですね。(略)両方とも子供のときにやはり仲よく同じい箱で寝させたんですって――それでいて黒い鼠は捕るそうですよ。』
と言って、感に堪えないような顔をした。
(略)あるとき、通りすがりに気をつけて見ると、いろいろな建具や襖をよせかけた際で、一疋の純白な鼠が猫と背中合せで、総ての古い習慣的怨恨を忘れはてたもののように仲よく寝ているのを見ると、いまさらのように馴致されやすい動物の善良さを感じた。」
馴致、とは初めて見た語彙だ。三省堂の新明解国語辞書によると、
「 じゅんち【馴致】―する
1 その状態に慣らして、段段にそうさせること。
2 その結果を引き起こすこと。〔ただし、悪い結果とは限らない〕」だそうです。
 猫の描写箇所だけを抜粋したが、どちらかというと犬のクロのほうがこの自伝的小説に大きく描写されている。
犬と夫婦の関係については、芥川の「奇怪な再会」をちょっと思わせる…というのは、実は逆のようだ。
芥川龍之介の「奇怪な再会」は大正九年十二月の作品。 
室生犀星の「結婚者の手記」は大正九年二月に中央公論に発表され、同年三月に新潮社より単行本が出ている。
「奇怪な再会」を読んだ時に、発行年度というよりは初出の時期を調べて、谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のをんな」(一九三六年=昭和十一年一月と七月の「改造」に分載)が芥川に影響されたのでは、ということに気がついた。
谷崎の「猫と~」は「結婚者の手記」と「奇怪な再会」に似た箇所があるのだ。
以下、三作品(室生作品、芥川作品、谷崎作品)の類似点。

室生作品では、作者自身らしい男性に妻となった女性が実家から犬を連れてくる場面から始まる。犬は妻にとても懐いており、妻と暮し始めた夫にはなかなか懐こうとしない。夫は妻の知らざる過去と共に、犬にも嫉妬する。
「 ある夕方、私達は夕食の卓にむかうと、妻の方の分には野菜だけがついていて、さかながついていなかった。(略)
『お前におさかながついていないじゃないか』と言うと、
『わたし、きょうはほしくないのですの。だからようござんすわ。』(略)
私はそっとふりかえると、クロがいま皿のなかのものを目をほそめながら、(略)それは夕食に私がたべたと同じような、紅いひれをもった一疋のさかなであった。」
芥川作品では、裕福な男性が中国人らしい美しい女性を妾として囲っていて、迷い犬を彼女の希望で飼い始める。食卓にも同席する犬に男は嫉妬する。彼女は大陸にも別れた男性がいて、置いてきた犬とその男性に想いを馳せることもある。正妻と妾の関係も含めて、三角関係どころではない複雑な愛憎が交錯する。
谷崎作品がこの中では森繁久弥主演で映画化もされたことだし、近年多く発行されている猫雑誌各誌での猫を題材とした文学の特集ページでは必ずといっていい程紹介される。つまり、一番有名である。
庄造が後妻の福子に頼んで用意させた鯵の二杯酢を、猫のリリーに殆ど与えてしまうという場面があるが、今回読む順番が逆であった(谷崎、芥川、室生の順で読んだ)自分の不見識さを思い知らされた。
谷崎翁、これは室生犀星の作品に似ているではありませんか! 初出年度が一番遅い作品が一番有名で英語訳も出ているという点が何だか、室生、芥川両氏に申し訳ないような…って私が言うのも筋が違うのだろうけど。勿論、似ている箇所はごく一部で、いい作品には違いない。が、今まで「猫文学の傑作の一つ」と持ち上げていたことを、ダウングレードしたくなってきた。
 芥川は室生犀星ととても親しかったようだ。少なくとも、「小説にプロットは必要であるか」論を芥川と交わした谷崎よりは。
関東大震災は大正一二年、芥川龍之介の自死は昭和二年(一九二七年)。
なお、現在放送中の「花子とアン」で関東大震災の描写がやや薄いことが気になった。芥川の自死はどう描かれるのか、興味のあるところ。

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深夜の人・結婚者の手記 (講談社文芸文庫)

室生 犀星 / 講談社


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by suezielily | 2014-07-28 18:16 | 猫書籍