猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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村上春樹「長寿猫の秘密」
村上春樹・安西水丸の「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」に収録されている「長寿猫の秘密」より、抜粋。
「 猫が好きで、生まれてからこれまでにずいぶんとたくさんの猫を飼ったけれど、二十年以上生きた猫となるとたった一匹しかいない。
この猫は今年の二月でとうとう二十一歳になり、記録を更新中なのだが、現在は僕が手元に飼っているわけではない。おおよそ九年前に日本を出て行くときに、もう当分猫は飼えないからということで、当時講談社の出版部長であった徳島さんのお宅に預けていったのである。というか、『書き下ろしの長編をひとつ渡しますから、なんとかこの猫、お願いしますね』と言って、ほとんど無理やり放り込んでいったようなものだった。
しかしそのときの『猫と交換』に書いた長編が、結果的には僕にとってのいちばんのベストセラーである『ノルウェィの森』になったわけだから、これはいちおう『福猫』と呼んで差し支えないのではないだろうか。」
「 この猫の名前は『ミューズ』という。うちの奥さんが、(略)わたなべまさこの『ガラスの城』という少女漫画に例によってのめりこんでいて、その登場人物の名前をつけたのである。(略)ずいぶん抵抗したのだが、(略)押し切られ、結局『ミューズ』に定着してしまった。たしかに(略)ミューズさんと同じように、ぴっと綺麗でスマートな生後半年の雌のシャム猫だったが、でもねえ……。」
「僕がこの猫を飼うようになったのは国分寺に住んでいるときで、その頃は小さな店を経営していた。(略)僕が一人で本を読んでいると、猫がよく邪魔しに来たことを記憶している。ミューズは一風変った猫で、僕と一緒に外を散歩するのが大好きだった。」
わたなべまさこ先生の漫画というと…欧州風の絵柄でホラー漫画の大家、であるから「春樹さん(の奥様)、そんな怖い作風の漫画から!?」と思ったが。
「長寿猫の秘密・出産編」より、抜粋。
「この前二十一歳になる長寿猫ミューズのことを書いたが、この猫には奇妙なエピソードがいっぱいあるので(実を言うと本を一冊書けるくらいある)、ちょっと追加して書かせてください。」
「 ミューズは雌猫なので何度か子どもを産んだ。(略)
七歳か八歳になったころに、知り合いの獣医さんに『もう年だから、猫の体のためにもそろそろ避妊手術をした方がいいですよ』と言われて、そうしてもらった。
でもそれまでに全部で五回くらいは妊娠し分娩したと思う。
猫というのは普通人目を避けて、暗いところでひっそりと産むものである。僕がそれまでに飼った猫たちもみんなそうだった。産んだ子猫も人には触らせない。でもこのミューズだけは必ず明るいところで、それも僕の隣で子どもを産んだ。」
「 子どもを産むとき、ミューズは上半身を立て、両脚を広げて座る。(略)ミューズはどういうわけか子どもを産むときには絶対に僕のところにしかこなかった。(略)
でも出産している猫と、夜中に何時間もじっと目と目を合わせているとき、僕と彼女とのあいだには完璧なコミュニケーションのようなものが存在したと思う。(略)
これは今思うと、ほんとうに奇妙な体験だった。
というのは――世の中の大抵の気の利いた猫がそうであるように――ミューズも普段は最後まで僕らに心を許してはいなかったからだ。」
村上春樹という作家は、春樹さん自身が言われるように、日本の近代文学に殆ど影響を受けていないということが定説になっているようだが…このエッセイの「飼猫が出産の立会いを望んだ」という箇所は谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のをんな」にそっくりな場面があるのだ。谷崎自身も、飼猫の出産に立ち会ったことがあるのかもしれない。
「長寿猫の秘密・寝言編」より、抜粋。
「 全国の猫嫌いのみなさん、申し訳ありませんが、またまた猫の話です。おまけにいささか気味悪い話ですので、『そんなもの読みたくない』という人はどうか次のページに移ってください。」
「 さて二十一歳を過ぎてまだ生き続けているミューズ(雌・シャム猫)だが、これは本当に謎に満ちた猫だった。(略)ある種の猫は夢を見るし、寝言も言う。(略)だからそれ自体は珍しいことではない。でもこの猫はときどき人間の言葉(らしきもの)で寝言を言った。」
「 ある日僕は猫と一緒に寝ていた。(略)僕は家に一人でいて、猫と枕を並べて寝ていた。(略)
ミューズは人間みたいに、枕に頭を載せて眠るのがくせだった。(略)
僕がそのとき眠りにつこうとしてのぼんやり目を閉じていると、『だってそんなこと言ったって……』という小さな声がすぐ耳元で聞こえた。(略)でも誰もいない。となりでは猫が熟睡しているだけである。(略)
ミューズの肩を揺すって起こした。猫は(略)ふてくされた起き方をした。
『あのさ、ひょっとして今何か言った?』と僕はまじで猫に訊いてみた。
猫は目を開けて僕の顔をじろっと見て、(略)大きなあくびをして、びよーんと身体を伸ばしてから、(略)
首を振り振りそのままどこかに行ってしまった。でも僕はそのとき『この猫はきっと何かを隠している』という強い印象を受けた。」
「ほんとうに理想的な猫だった。綺麗で、頭が良く、健康で、数多くの謎に満ちていた。」
「村上朝日堂」の中にアタリ猫とスカ猫の定義なるものがあったのを思い出す。
青木るえかの「猫の品格」の中にも、それが引用されていた。
青木氏は、「週刊文春」誌上でTVドラマ評を亀和田武氏と隔週で連載しておられる。
以前小栗旬主演の獣医ドラマので獣医の定義?を書いていた。猫を飼っておられるので何人もの獣医に接する機会があったそうだが、「うっすらと親切だが怖い」だったか…うろ覚え。とにかく、小栗演じる獣医が、今まで青木氏が会ったことのある獣医達に良く似ていたそうだ。
つい最近も、陣内孝則演じる獣医を小栗獣医と比べてダメだ、と手厳しかった。そもそもドラマとしての出来も悪い、と散々。私も一応見てはいるが、今のところ患畜が犬ばかりで猫が登場しないので、録画したドラマをすぐに消去している。
北野武さんの子供の頃をドラマ化した作品での、父親役はとても良かったのだが…
「 猫が好きで、生まれてからこれまでにずいぶんとたくさんの猫を飼ったけれど、二十年以上生きた猫となるとたった一匹しかいない。
この猫は今年の二月でとうとう二十一歳になり、記録を更新中なのだが、現在は僕が手元に飼っているわけではない。おおよそ九年前に日本を出て行くときに、もう当分猫は飼えないからということで、当時講談社の出版部長であった徳島さんのお宅に預けていったのである。というか、『書き下ろしの長編をひとつ渡しますから、なんとかこの猫、お願いしますね』と言って、ほとんど無理やり放り込んでいったようなものだった。
しかしそのときの『猫と交換』に書いた長編が、結果的には僕にとってのいちばんのベストセラーである『ノルウェィの森』になったわけだから、これはいちおう『福猫』と呼んで差し支えないのではないだろうか。」
「 この猫の名前は『ミューズ』という。うちの奥さんが、(略)わたなべまさこの『ガラスの城』という少女漫画に例によってのめりこんでいて、その登場人物の名前をつけたのである。(略)ずいぶん抵抗したのだが、(略)押し切られ、結局『ミューズ』に定着してしまった。たしかに(略)ミューズさんと同じように、ぴっと綺麗でスマートな生後半年の雌のシャム猫だったが、でもねえ……。」
「僕がこの猫を飼うようになったのは国分寺に住んでいるときで、その頃は小さな店を経営していた。(略)僕が一人で本を読んでいると、猫がよく邪魔しに来たことを記憶している。ミューズは一風変った猫で、僕と一緒に外を散歩するのが大好きだった。」
わたなべまさこ先生の漫画というと…欧州風の絵柄でホラー漫画の大家、であるから「春樹さん(の奥様)、そんな怖い作風の漫画から!?」と思ったが。
「長寿猫の秘密・出産編」より、抜粋。
「この前二十一歳になる長寿猫ミューズのことを書いたが、この猫には奇妙なエピソードがいっぱいあるので(実を言うと本を一冊書けるくらいある)、ちょっと追加して書かせてください。」
「 ミューズは雌猫なので何度か子どもを産んだ。(略)
七歳か八歳になったころに、知り合いの獣医さんに『もう年だから、猫の体のためにもそろそろ避妊手術をした方がいいですよ』と言われて、そうしてもらった。
でもそれまでに全部で五回くらいは妊娠し分娩したと思う。
猫というのは普通人目を避けて、暗いところでひっそりと産むものである。僕がそれまでに飼った猫たちもみんなそうだった。産んだ子猫も人には触らせない。でもこのミューズだけは必ず明るいところで、それも僕の隣で子どもを産んだ。」
「 子どもを産むとき、ミューズは上半身を立て、両脚を広げて座る。(略)ミューズはどういうわけか子どもを産むときには絶対に僕のところにしかこなかった。(略)
でも出産している猫と、夜中に何時間もじっと目と目を合わせているとき、僕と彼女とのあいだには完璧なコミュニケーションのようなものが存在したと思う。(略)
これは今思うと、ほんとうに奇妙な体験だった。
というのは――世の中の大抵の気の利いた猫がそうであるように――ミューズも普段は最後まで僕らに心を許してはいなかったからだ。」
村上春樹という作家は、春樹さん自身が言われるように、日本の近代文学に殆ど影響を受けていないということが定説になっているようだが…このエッセイの「飼猫が出産の立会いを望んだ」という箇所は谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のをんな」にそっくりな場面があるのだ。谷崎自身も、飼猫の出産に立ち会ったことがあるのかもしれない。
「長寿猫の秘密・寝言編」より、抜粋。
「 全国の猫嫌いのみなさん、申し訳ありませんが、またまた猫の話です。おまけにいささか気味悪い話ですので、『そんなもの読みたくない』という人はどうか次のページに移ってください。」
「 さて二十一歳を過ぎてまだ生き続けているミューズ(雌・シャム猫)だが、これは本当に謎に満ちた猫だった。(略)ある種の猫は夢を見るし、寝言も言う。(略)だからそれ自体は珍しいことではない。でもこの猫はときどき人間の言葉(らしきもの)で寝言を言った。」
「 ある日僕は猫と一緒に寝ていた。(略)僕は家に一人でいて、猫と枕を並べて寝ていた。(略)
ミューズは人間みたいに、枕に頭を載せて眠るのがくせだった。(略)
僕がそのとき眠りにつこうとしてのぼんやり目を閉じていると、『だってそんなこと言ったって……』という小さな声がすぐ耳元で聞こえた。(略)でも誰もいない。となりでは猫が熟睡しているだけである。(略)
ミューズの肩を揺すって起こした。猫は(略)ふてくされた起き方をした。
『あのさ、ひょっとして今何か言った?』と僕はまじで猫に訊いてみた。
猫は目を開けて僕の顔をじろっと見て、(略)大きなあくびをして、びよーんと身体を伸ばしてから、(略)
首を振り振りそのままどこかに行ってしまった。でも僕はそのとき『この猫はきっと何かを隠している』という強い印象を受けた。」
「ほんとうに理想的な猫だった。綺麗で、頭が良く、健康で、数多くの謎に満ちていた。」
「村上朝日堂」の中にアタリ猫とスカ猫の定義なるものがあったのを思い出す。
青木るえかの「猫の品格」の中にも、それが引用されていた。
青木氏は、「週刊文春」誌上でTVドラマ評を亀和田武氏と隔週で連載しておられる。
以前小栗旬主演の獣医ドラマので獣医の定義?を書いていた。猫を飼っておられるので何人もの獣医に接する機会があったそうだが、「うっすらと親切だが怖い」だったか…うろ覚え。とにかく、小栗演じる獣医が、今まで青木氏が会ったことのある獣医達に良く似ていたそうだ。
つい最近も、陣内孝則演じる獣医を小栗獣医と比べてダメだ、と手厳しかった。そもそもドラマとしての出来も悪い、と散々。私も一応見てはいるが、今のところ患畜が犬ばかりで猫が登場しないので、録画したドラマをすぐに消去している。
北野武さんの子供の頃をドラマ化した作品での、父親役はとても良かったのだが…
by suezielily
| 2014-08-11 17:28
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