猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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中井英夫「影の狩人」
中井英夫「影の狩人」より、抜粋。
「 寒気と遠い星のほかには何もない暗い道だったが、お誂えに黒猫が一匹、先を歩いているので青年は笑った。(略)
まだ若く、しなやかな姿態で、手馴ずけようとして口笛を吹いたり、小魚を抛ったりしてみても、軽い跳躍で姿を隠し、甘える気配はなかった。
いまも黒猫は、先導するように歩いて行きながら、(略)不意に姿を消した。(略)
黒猫ならば闇に紛れることはいくらでも可能だと思うと、何か自分がなくしものをしたような気になった。
……その夜、青年は、なかなか温もろうとしないベッドの中で、幻の黒猫を抱いた。猫は滑らかな天鵞絨質の柔毛に蔽われ、甘えて擦り寄ってきた。(略)
手触りも猫のように柔らかくなく、しなやかであっても筋肉質の肉体に変った。ふさふさと長い尻尾が下肢にまつわり、愛撫にも似た軽打を繰り返した。これは黒猫などではなく、今夜の話に出たあの美しい悪魔かも知れないと思いながら、青年は眠りに落ちた。(略)
陸
その夜、青年のベッドに寄り添ったのは黒猫ではなく、初めから美しい悪魔だった。(略)
玖
その夜、彼は腕の中に黒猫を抱いて青年の部屋に現われたが、黒猫は床に降ろされると、たちまち走り去って消え失せた。」
東雅夫がアンソロジーを組んだ「血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選」に収録されていた。
出典は「中井英夫全集 第三巻 とらんぷ譚」(東京創元社)とある。
他に、三島由紀夫の「仲間」、江戸川乱歩の「吸血鬼」(小説ではなく、随筆)、倉橋由美子の「ヴァンピールの会」、種村季弘の「吸血鬼入門」なども収録。
猫の描写があるのは、中井英夫の作品だけであった。
三島の「仲間」は、中年男性二人(一人は青年のようだが、吸血鬼であるならばそうとは言えまい)と少年が一人。中井英夫の「影の狩人」は青年が二人と、黒猫。どちらも妖しい匂いがする。
横溝正史の作品のなかに、乱歩の作品とよく似たものがある。
何を真似していたのだ、と読んだときは思ったが、後に二人の随筆をそれぞれ読んで、双方が海外の探偵、推理小説をかなり読み込んでいて、その影響が大きいことが分かった。
だからどちらが真似したとかではなくて、影響を受けた作品が同じだから似たものになったのかもしれないな、疑って悪かったな、と思った次第。
「 寒気と遠い星のほかには何もない暗い道だったが、お誂えに黒猫が一匹、先を歩いているので青年は笑った。(略)
まだ若く、しなやかな姿態で、手馴ずけようとして口笛を吹いたり、小魚を抛ったりしてみても、軽い跳躍で姿を隠し、甘える気配はなかった。
いまも黒猫は、先導するように歩いて行きながら、(略)不意に姿を消した。(略)
黒猫ならば闇に紛れることはいくらでも可能だと思うと、何か自分がなくしものをしたような気になった。
……その夜、青年は、なかなか温もろうとしないベッドの中で、幻の黒猫を抱いた。猫は滑らかな天鵞絨質の柔毛に蔽われ、甘えて擦り寄ってきた。(略)
手触りも猫のように柔らかくなく、しなやかであっても筋肉質の肉体に変った。ふさふさと長い尻尾が下肢にまつわり、愛撫にも似た軽打を繰り返した。これは黒猫などではなく、今夜の話に出たあの美しい悪魔かも知れないと思いながら、青年は眠りに落ちた。(略)
陸
その夜、青年のベッドに寄り添ったのは黒猫ではなく、初めから美しい悪魔だった。(略)
玖
その夜、彼は腕の中に黒猫を抱いて青年の部屋に現われたが、黒猫は床に降ろされると、たちまち走り去って消え失せた。」
東雅夫がアンソロジーを組んだ「血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選」に収録されていた。
出典は「中井英夫全集 第三巻 とらんぷ譚」(東京創元社)とある。
他に、三島由紀夫の「仲間」、江戸川乱歩の「吸血鬼」(小説ではなく、随筆)、倉橋由美子の「ヴァンピールの会」、種村季弘の「吸血鬼入門」なども収録。
猫の描写があるのは、中井英夫の作品だけであった。
三島の「仲間」は、中年男性二人(一人は青年のようだが、吸血鬼であるならばそうとは言えまい)と少年が一人。中井英夫の「影の狩人」は青年が二人と、黒猫。どちらも妖しい匂いがする。
横溝正史の作品のなかに、乱歩の作品とよく似たものがある。
何を真似していたのだ、と読んだときは思ったが、後に二人の随筆をそれぞれ読んで、双方が海外の探偵、推理小説をかなり読み込んでいて、その影響が大きいことが分かった。
だからどちらが真似したとかではなくて、影響を受けた作品が同じだから似たものになったのかもしれないな、疑って悪かったな、と思った次第。
by suezielily
| 2015-07-08 15:34
| 猫書籍