猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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浜尾四郎「殺された天一坊」
新潮文庫の「昭和ミステリー大全集 上巻」を古書店にて入手した。
その中の、浜尾四郎の「殺された天一坊」より、抜粋。
青空文庫でも読むことができる。
浜尾四郎「殺された天一坊」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000289/files/1796_22485.html
「 あれは何年いつ頃でございましたでしょうか、四谷辺で或る後家が殺された事がございます。
お上で色々とお調べの末、色恋の果の出来事と申す事になり、後家が生前懇ろにして居たらしい男をお捜しになった事がございました。その時の御奉行様の御明智には一同皆恐れ入りましたものでございます。あの時、疑のかかった男数人(其の中に村井勘作も居りましたのでございますが)をお白洲にお呼び出しになり、一方御奉行様は殺された後家の処に永く飼われて居りました猫を人に持たせて御出になりました。扠さて、人が猫を放しますと猫はするすると煙草屋彦兵衛という者の所にまいり、直ぐその膝の上にのってしまいました。後家の家に飼われて居りました猫は平生しげしげ出入する男だけを見おぼえて居りまして、無心に罪人を指してしまったのでございました。
之をじっと御覧になって居られた御奉行様は直ちに彦兵衛をお捕えさせになり種々とお糾しになりましたが、彦兵衛は後家の家に今迄一歩も入った事がないと申して中々白状致さないのでございます。平生から生き物がすきで彦兵衛方にも猫が居ると申し、丁度近頃その遊び相手の猫がちょいちょい来るのを後家の猫とは聊かも知らず、よく食べ物などをやって可愛がって居たと、こう申し開きを致しましたので、
『それでは其の方の猫をここに連れ参れ』
と御奉行様が仰言いました。すると彦兵衛は十日程以前よりその猫が行方知れずになったと云うようなお答えを致したのでございました。此の男は独身者で、誰も彦兵衛が猫を飼って居たと申して出る者もございません。其の中、いろいろ責められて包み切れず、とうとう後家殺しの一部始終を白状致してしまいました。あなた様方もご存知の通り、申すまでもなく彦兵衛は直ちにお処刑になってしまいました。
所が、先程申し上げました村井勘作という罪人が、四谷の後家殺しを御奉行様の前で、突然白状致したのでございます。初めは御奉行様もお取り上げにもならず「何をたわけた事を申す」と仰言っていらしったそうでございますが、一方、段々役目の方々が訊して参りますと、それがすっかりあの時の事情と符合致すのでございます。そして、平生猫が大嫌いであったので後家の所へ通って居りました頃も、其処の猫を見つけるといきなり足蹴に致したり打ったり致しますので、猫も村井の顔を見る度に恐れて逃げ廻って居たのだと申しましたのでございます。真実猫が嫌いであったのか、仮令猫にもせよ密事を外の目に見られるのを恐れてわざと猫を追いました事やらよくは判りませぬが、左様申し上げたのでございました。何でも之をお聴きになった時の御奉行様のお顔色は土のようだったと御役目の方から承りました。御奉行様は、ただ『たわけ者』と一言仰せられた切り、すっとその場を立っておしまいなされたそうでございます。
御奉行様の明るいお顔が暗く陰気になりましたのはたしか其の日からでございました。其の日お帰りになりましても一言も口をお開きになりません。其の夜はとうとうお褥しとねの上にもお乗りにならなかったようでございました。其の翌日はお上へは所労と申し上げられて、とうとうお邸に引き籠っておいでになりました。」
底本は「浜尾四郎全集1」(桃源社)、初出は「改造」昭和四(1929)年十月。
「御奉行様」というのは大岡越前のようだが、この語り手の男性は何者であろうか?
「堀川のお殿様」や猿も登場する芥川龍之介の「地獄変」に影響を受けているのだろうか?
天一坊、というからにはこの箇所はメインではないのだがこのように猫の描写がある。
将軍のご落胤、ということでTVドラマでも題材になっているネタですね。
浜尾四郎は浜尾侍従の父だそうである。
皇室は南朝北朝の問題があるし、ご落胤どころの騒ぎではないこともあったかもしれない???
天皇や皇太子は彼の小説を読んだことがあるのだろうか?
「昭和ミステリー大全集 上巻」には、渡辺温の「嘘」という短編も収録されている。
「若い女がオレンジ色のジャケツを着て飛び出して来たのであった。帽子をかぶらぬお河童で(略)
その娘がスペインの踊り子のように両手を腰にかって大きく肩をゆすりながら向うへ歩いて行くのである。」
「昭和ミステリー大全集 上巻」は長谷部史親がたいへん分かり易く解説を書いている。
「昭和ミステリー大全集 上巻」には、渡辺温の「嘘」という短編も収録されている。
「若い女がオレンジ色のジャケツを着て飛び出して来たのであった。帽子をかぶらぬお河童で(略)
その娘がスペインの踊り子のように両手を腰にかって大きく肩をゆすりながら向うへ歩いて行くのである。」
「嘘」は昭和二(1927)年三月に「新青年」に発表されたとある。
ウィリアム・アイリッシュの「幻の女」を読んだばかりなので、「オレンジ色のジャケツの女、帽子、スペインの踊り子」というと、あれれ、と思った。ウィリアム・アイリッシュ名義で1942年に「幻の女 (Phantom Lady)」が発表されたとあるが、1926年にW・アイリッシュ(=コーネル・ウールリッチ)の作家活動は始まっているので…うーん?
この偶然は一体何だろう。アイリッシュ=ウールリッチが、「幻の女」を1942年に発表する前に、別の作品に似たようなプロットの作品を発表していたのだろうか?
この謎が解ける方、ご教示を。
その中の、浜尾四郎の「殺された天一坊」より、抜粋。
青空文庫でも読むことができる。
浜尾四郎「殺された天一坊」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000289/files/1796_22485.html
「 あれは何年いつ頃でございましたでしょうか、四谷辺で或る後家が殺された事がございます。
お上で色々とお調べの末、色恋の果の出来事と申す事になり、後家が生前懇ろにして居たらしい男をお捜しになった事がございました。その時の御奉行様の御明智には一同皆恐れ入りましたものでございます。あの時、疑のかかった男数人(其の中に村井勘作も居りましたのでございますが)をお白洲にお呼び出しになり、一方御奉行様は殺された後家の処に永く飼われて居りました猫を人に持たせて御出になりました。扠さて、人が猫を放しますと猫はするすると煙草屋彦兵衛という者の所にまいり、直ぐその膝の上にのってしまいました。後家の家に飼われて居りました猫は平生しげしげ出入する男だけを見おぼえて居りまして、無心に罪人を指してしまったのでございました。
之をじっと御覧になって居られた御奉行様は直ちに彦兵衛をお捕えさせになり種々とお糾しになりましたが、彦兵衛は後家の家に今迄一歩も入った事がないと申して中々白状致さないのでございます。平生から生き物がすきで彦兵衛方にも猫が居ると申し、丁度近頃その遊び相手の猫がちょいちょい来るのを後家の猫とは聊かも知らず、よく食べ物などをやって可愛がって居たと、こう申し開きを致しましたので、
『それでは其の方の猫をここに連れ参れ』
と御奉行様が仰言いました。すると彦兵衛は十日程以前よりその猫が行方知れずになったと云うようなお答えを致したのでございました。此の男は独身者で、誰も彦兵衛が猫を飼って居たと申して出る者もございません。其の中、いろいろ責められて包み切れず、とうとう後家殺しの一部始終を白状致してしまいました。あなた様方もご存知の通り、申すまでもなく彦兵衛は直ちにお処刑になってしまいました。
所が、先程申し上げました村井勘作という罪人が、四谷の後家殺しを御奉行様の前で、突然白状致したのでございます。初めは御奉行様もお取り上げにもならず「何をたわけた事を申す」と仰言っていらしったそうでございますが、一方、段々役目の方々が訊して参りますと、それがすっかりあの時の事情と符合致すのでございます。そして、平生猫が大嫌いであったので後家の所へ通って居りました頃も、其処の猫を見つけるといきなり足蹴に致したり打ったり致しますので、猫も村井の顔を見る度に恐れて逃げ廻って居たのだと申しましたのでございます。真実猫が嫌いであったのか、仮令猫にもせよ密事を外の目に見られるのを恐れてわざと猫を追いました事やらよくは判りませぬが、左様申し上げたのでございました。何でも之をお聴きになった時の御奉行様のお顔色は土のようだったと御役目の方から承りました。御奉行様は、ただ『たわけ者』と一言仰せられた切り、すっとその場を立っておしまいなされたそうでございます。
御奉行様の明るいお顔が暗く陰気になりましたのはたしか其の日からでございました。其の日お帰りになりましても一言も口をお開きになりません。其の夜はとうとうお褥しとねの上にもお乗りにならなかったようでございました。其の翌日はお上へは所労と申し上げられて、とうとうお邸に引き籠っておいでになりました。」
底本は「浜尾四郎全集1」(桃源社)、初出は「改造」昭和四(1929)年十月。
「御奉行様」というのは大岡越前のようだが、この語り手の男性は何者であろうか?
「堀川のお殿様」や猿も登場する芥川龍之介の「地獄変」に影響を受けているのだろうか?
天一坊、というからにはこの箇所はメインではないのだがこのように猫の描写がある。
将軍のご落胤、ということでTVドラマでも題材になっているネタですね。
浜尾四郎は浜尾侍従の父だそうである。
皇室は南朝北朝の問題があるし、ご落胤どころの騒ぎではないこともあったかもしれない???
天皇や皇太子は彼の小説を読んだことがあるのだろうか?
「昭和ミステリー大全集 上巻」には、渡辺温の「嘘」という短編も収録されている。
「若い女がオレンジ色のジャケツを着て飛び出して来たのであった。帽子をかぶらぬお河童で(略)
その娘がスペインの踊り子のように両手を腰にかって大きく肩をゆすりながら向うへ歩いて行くのである。」
「昭和ミステリー大全集 上巻」は長谷部史親がたいへん分かり易く解説を書いている。
「昭和ミステリー大全集 上巻」には、渡辺温の「嘘」という短編も収録されている。
「若い女がオレンジ色のジャケツを着て飛び出して来たのであった。帽子をかぶらぬお河童で(略)
その娘がスペインの踊り子のように両手を腰にかって大きく肩をゆすりながら向うへ歩いて行くのである。」
「嘘」は昭和二(1927)年三月に「新青年」に発表されたとある。
ウィリアム・アイリッシュの「幻の女」を読んだばかりなので、「オレンジ色のジャケツの女、帽子、スペインの踊り子」というと、あれれ、と思った。ウィリアム・アイリッシュ名義で1942年に「幻の女 (Phantom Lady)」が発表されたとあるが、1926年にW・アイリッシュ(=コーネル・ウールリッチ)の作家活動は始まっているので…うーん?
この偶然は一体何だろう。アイリッシュ=ウールリッチが、「幻の女」を1942年に発表する前に、別の作品に似たようなプロットの作品を発表していたのだろうか?
この謎が解ける方、ご教示を。
by suezielily
| 2016-06-25 15:59
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