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フローベール「純な心」

ギュスターヴ・フローベール「純な心」の本文より、抜粋。西村勇訳、東京図書出版。
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「 彼は地図帳を手に取ると、まず経度というものについて説明をし始めた。フェリシテが呆気に取られているのを前に、(略)あるかなきかの黒い一転を指すと、『ほら、ここだよ』と言ってあげた。(略)彼女はヴィクトルが滞在している家がどこにあるのか教えて欲しいと頼んだ。ブレーは(略)ハハハと大笑いした。(略)フェリシテにはそのわけがわからなかった。――ひょっとしたら、甥の姿絵までも見られるのではないかと期待している彼女であった。」
同じ箇所の英訳。Project Gutenbergより。
「 He reached for his map and began some explanations concerning longitudes, and smiled with superiority at Félicité's bewilderment. At last, he took his pencil and pointed out an imperceptible black point in the scallops of an oval blotch, adding: "There it is." She bent over the map; the maze of coloured lines hurt her eyes without enlightening her; and when Bourais asked her what puzzled her, she requested him to show her the house Victor lived in. Bourais threw up his hands, sneezed, and then laughed uproariously; such ignorance delighted his soul; but Félicité failed to understand the cause of his mirth, she whose intelligence was so limited that she perhaps expected to see even the picture of her nephew!」
「けれども、夏の或る日、とうとう夫人は思い切ってそれらに触れてみた。すると、戸棚の中から幾羽ものの蛾が舞い出てきた。
 彼女の衣類は棚板の下に並べてあった。棚には人形が三つと、投げ輪が幾つかと、お飯事道具一揃えと、彼女が使っていた化粧鉢とが載っていた。二人の女達は彼女の下着や、靴下やハンカチまでもそれぞれに取り出しては、それらを畳み直す前に二つの寝台の上に広げてみるのだった。陽光はそれらの憐れな物々を照らし出し、ついているしみや、身のこなしのまま皺の寄っているのまでも見せていた。空気はぼんやりと蒼白く、一羽の鶫がどこかで囀っていた。なにもかもが深い静けさのなかで息づいていた。ふと、二人は毛足の長い、栗色をした、フラシ天の小さな帽子を見つけた。が、それはもうすっかり虫に喰われていた。」
フローベールの「三つの物語」のなかの一つとして太田浩一に訳された福武書店版の、同じ箇所。
「夏のある日、とうとう戸棚を開けてみることにした。なかから数匹の蛾が飛び立っていった。
服がきちんと一列に並べられていた。上の棚には、人形が三つ、輪回しあそびの輪、ままごとの道具、日ごろ使っていた洗面器がのっている。夫人とフェリシテは、ペチコートや靴下やハンカチなども取りだして、たたみなおして戸棚にしまうまえに、それらを二つの寝台にひろげてみた。悲しみをさそうこれらの品々に日があたり、しみや、身体の動きでできたしわが目についた。外気は暑く、青味を帯びていた。つぐみのさえずりがどこかから聞こえてくる。なにもかもが、深い安らぎのなかで息づいているかのようだった。ふたりは毛足の長い絹綿ビロードの、小さな栗色の帽子を見つけた。が、それはすっかり虫に喰われていた。」
同じ箇所の英訳。Project Gutenbergより。グーテンベルグといえば、活版印刷の祖。それにちなんでの飜訳チームということだろうか?
http://www.gutenberg.net/
「One summer day, however, she resigned herself to the task and when she opened the closet the moths flew out.
Virginia's frocks were hung under a shelf where there were three dolls, some hoops, a doll-house, and a basin which she had used. Félicité and Madame Aubain also took out the skirts, the handkerchiefs, and the stockings and spread them on the beds, before putting them away again. The sun fell on the piteous things, disclosing their spots and the creases formed by the motions of the body. The atmosphere was warm and blue, and a blackbird trilled in the garden; everything seemed to live in happiness. They found a little hat of soft brown plush, but it was entirely moth-eaten.」
 フランス語が全く出来ないので原文を確認しようが無いのだが、英訳がやや素っ気無い印象を受ける。
西村勇と太田浩一の訳では大きな違いはない。この後の文で娘を亡くした奥様と女中のフェリシテが抱き合って泣く場面となる。娘の遺品を整理しているときに、ふっと悲しみが沸き起こってくるという秀逸な描写である。福武書店に比べて自主出版に近いのかもしれない小さな?出版社から刊行した西村勇に、軍配をあげたい。
 フローベール作品には弟子のモーパッサンから興味を惹かれた。これでようやく二作品読んだことになる。
「ボヴァリー夫人」の登場人物の誰一人として共感できないのだが、それでも物語の面白さ、構成力、力強さに圧倒された。誰かに共感できないと読めないなどと言う人がいたが、そういうことと作品の良さは関係ない。
「純な心」のフェリシテは無学で無欲で愛情深い、働き者である。
フローベールの弟子であるモーパッサンの「女の一生」のロザリーをちょっと思わせる。
死体や怪我人の描写が巧みなのは祖父が医師だった影響もあるそうで、「ボヴァリー夫人」にも顕著である。
地図を始めて見た庶民の反応は、当時はそのようであったろう。
遠く離れたアメリカの地にいる、甥の住んでいる家までも見えるのでは、と思って見せてくれた知人はその無知に笑うのだけれども。現代ならば、グーグルマップ等でそれすら可能だけれども、情緒も文学性のかけらも無いね。
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感情教育(上) (光文社古典新訳文庫)

フローベール / 光文社


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by suezielily | 2017-01-04 16:28 | 文学