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猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介


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猫と庄造と二人のをんな

 谷崎の作品中、映画化されたりした有名作品の中では愛すべき小品、といった趣。
この作品も森繁久弥氏主演で映画化もされている。


猫と庄造と二人のをんな_e0265768_14465854.jpg





 夫と元妻、現在の妻の三角関係、あるいは夫の飼い猫リリーを併せての四角関係。
小説は庄造の元妻・品子が現在の妻である福子に宛てた手紙の文章から始まる。

「福子さんどうぞゆるして下さいこの手紙雪ちゃんの名借りましたけどほんとうは雪ちゃんではありません、そう云
うたら無論貴女は私が誰だかお分かりになったでしょうね」
「『あんた、その猫品子さんに譲ったげなさい』」
「『ええか、此処にじっとしてるねんで。出て来たらあかんで。ええなあ? 分ってるなあ?』
と、しんみり云って聴かせてから、襖を締めて立とうとすると、『待って下さい、何卒そこにいて下さい』とでも云うように、又、
『ニャア』
と云って悲しげに啼いた。(略)畜生ながらまあ何と云う情愛のある眼つきであろうと、その時庄造はそう思った。全く、不思議のようだけれども、押入れの奥の薄暗い中でギラギラ光っているその眼は、最早あのいたずらな仔猫の眼ではなくなって、たった今の瞬間に、何とも云えない媚びと、色気と、哀愁とを湛えた、一人前の雌の眼になっていたのであった。」

「 さて此の場合、品子が此の猫の身柄について福子に嫌味な手紙を出したり、塚本を通してあんなに執拗く頼んだりした動機と云ふものを、
一寸説明しておかなければならないのであるが、正直のところ、そこにはいたづらや意地悪の興味が手伝つてゐたことも確かであり、
又庄造が猫に釣られて訪ねて来るかも知れないと云ふ万一の望みもあつたであらうが、そんな眼の前のことよりも、
実はもっと遠いく先のこと、ま、早くて半年、おそくて一年か二年もすれば、多分福子と庄造の仲が無事に行く筈はないのだからと、そのときを見越してゐるのであつた。」

「  全く、不思議のやうだけれども、押入の奥の薄暗い中でギラく光つてゐるその眼は、
最早やあのいたづらな仔猫の眼ではなくなつて、たつた今の瞬間に、何とも云へない媚びと、色気と、哀愁とを湛へた、一人前の雌の眼になつてゐたのであつた。
彼は人間の女のお産を見たことはないが、もしその女が年の若い美しい人であつたら、
きつと此の通りの、恨めしいやうな切ないやうな眼つきをして、夫を呼ぶに違ひないと思つた。」

「 大方猫にしてみれば、自分が無愛想にしてゐた人に、今日から可愛がつて貰はうと思つて、いくらか今までの無礼を詫びる心持も籠めて、
あんな声を出してゐるのであらう。
すつかり態度を改めて、庇護を仰ぐ気になつたことを、何とかして分つて貰はうと、一生懸命なのであらう。」

「十年の間も一緒に暮らしてゐたとすれば、たとひ一匹の猫であつても、因縁の深いものがあるので、考へやうでは、福子や品子より一層親しいとも云へなくはない。
事実品子と連れ添うてゐたのは、足かけ四年と云ふけれども正味は二年半ほどであるし、福子も今のところでは、来てからやつと一と月にしかならないのである。
さうしてみれば長の年月を共にしていたリリーの方が、いろくな場合の回想と密接につながつてゐる訳で、
つまりリリー と云ふものは、庄造の過去の一部なのである。」

 
 妻であった自分が心ならずも追い出された状況を恨まないではないが、自分が嫁入り道具として持参した品物さえ返せとは言わない。 元夫を返せとも言わない。貴女の家庭からただ一つ戴きたいもの…猫のリリーちゃんを、と。 
品子は庄造がどれだけリリーを可愛がっていたか、自分が焼餅を妬くぐらいに、
いやもしかして福子さん、貴女だって覚えが無い?、と実に意地の悪い書き方をする。
不愉快な手紙を読んだ後に迎えた食卓で新婚家庭を邪魔する?リリー。

 これ見よがしに鯵の二杯酢をいちゃつきながらリリーに与える庄造。品子の作戦は当たった!
とうとう福子が言う…「あんた、その猫品子さんに譲ったげなさい。」

品子の目的はリリーではなく、元夫であることは明白。 
この導入部が実に見事。

アメリカ人に借りた英訳「A Cat, A Man and Two Women」を読んだ。
タイトルからlost in translationで、固有名詞である庄造がA Manとanonymous になっている。

他にも決定的なのが、原作の会話文は関西弁で書かれているのだが、英文を読んでもそのニュアンスが完全に伝わっているのかというと疑問である。 
喧嘩、特に夫婦喧嘩の場面は深刻なのだろうがどこかユーモラス。 品子の手紙はとても意地悪で皮肉で意味深。 
リリーと品子が仲良しになる件は大層暖かく優しい。 これがもし標準語で書かれていたとしたら、随分と違っていただろう。

貸してくれた友人に聞いたら、日本語の方言をアメリカのある地域の話し方で訳した日本文学があるらしい。
「余計にヒドイことになっていた」とは、友人の弁。

主人公?3人と1匹がどうなるのか、猫好きな方には是非読んで頂きたい作品。

Book Review of A Cat, a Man and Two women
A Cat, a Camera and a Cup of Coffee, the title of this blog named after Neko to Shozo to Futari no Onnna,
A
Cat, a Man and Two women, the work of Junichiro Tanizaki, a famous writer in Japan.

I really admire his works, especially this one.
The story begins with the letter from Shozo’s former wife, Shinako to current wife, Fukuko.
The way Shinako tells sounds very sarcastic and mean for Fukuko.
She asks she wants to be given her former husband loved cat, Lily,
even she never ask to return Shozo and her bride’s outfit when she got married with him before.

If Fukuko never listen to what Shinako says, she sounds so cruel.
Shinako wants to have someone to compensate her loneliness.
She also implies how he loves Lily even she envied when she was with him.
Every letter she talks could be trigger for her rival’s trigger to fight with Shozo.  
How smart she is!
After Fukuko read Shinako’s letter, she prepared the dinner table for him.  
He starts to flirts with his cat to throw sardines in vinegar, the menu he insists to eat even she does not want to have such cold things.
What Shinako’s plot hit it!
Fukuko finally says, “Well, you SHOULD give that cat to Shinako!”




by suezielily | 2012-08-09 14:32 | 猫書籍