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猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介


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金井美恵子「猫のような…」

「百鬼園寫眞帖」という本を見つけた。
内田百閒の弟子達や原作の映画に出演した高峰秀子(女優の随筆家として沢村貞子と双璧)、琴の師匠の宮城道雄夫人の喜代子さんなどが寄稿している。写真や猫のイラスト(どなたの筆に寄るものか)、百閒が迷い猫を探す広告の写真もある。
この本の中で百閒の「ノラや」と猫について書かれているのは、金井美恵子氏の「猫のような…」と題された文だけである。彼女は映画でも鋭い鑑賞眼をお持ちだ。
金井美恵子「猫のような…」_e0265768_19185399.jpg



金井氏の「タマや」の文庫を所持しているが、題名は「ノラや」へのオマージュだろう。
小説の中身は百閒のものとは異質なので、百閒が「贋作吾輩は猫である」を書いたようなものとは違う。
以下、「猫のような…」より抜粋。
「内田百閒の『ノラや』は、文字通り涙なしには読めない書物であると同時に、当然、ある種の狂気の物語であり、あたりはばからずにある一つの存在に向けられた<愛>の醜悪さの物語でもあるのだ。」「おそらく、『ノラや』は、猫について書かれた古今東西の多くの文章の中でも、独特のものなのではあるまいか。 百百閒の「ノラ」に対する愛情というのは、「ノラ」がまだ行方不明になる以前に書かれた「彼ハ猫デアル」(『いささ村竹』所収)と『ノラや』を読めばわかるように、あるいは、「ノラ」の後に飼うことになる「クル」に対してもそうなのだが、猫がいなくなった後に、より激しくなるらしいのだ。「ノラ」も「クル」も、まだ彼等が百閒の身のまわりにいる時は、さまで激しい愛の言葉や涙を浴びせられるわけではなく、『彼ハ猫デアル』に書かれた「ノラ」も『ノラや』に登場する「クル」も、彼等がいなくなった後に書かれた文章に書かれている「ノラ」や「クル」にくらべてみれば、影が薄いのである。」
さすがに金井氏である。
「猫びより」などの猫雑誌やあるいは通常は猫を専門としてはいないジャンルの雑誌で猫特集が組まれる時、
必ずといっていいほど「ノラや」が紹介される。しかし、通り一遍で、金井氏のような切り込み方をした
紹介文は見た事がない。
弟子の雑賀進氏は「ノラや」を私小説とまでいったが、「こんなに悩んでいる私って素敵でしょう」というのが日本文学独特の私小説の世界だとしたら、とまでいったら言い過ぎだろうけど。
頑固で我儘なのに多くの弟子達や、女性に慕われているというのはまさしくツンデレ! 猫のような人だったのか。
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猫の一年

金井 美恵子 / 文藝春秋


by suezielily | 2012-12-19 19:19 | 猫書籍