猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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小池真理子「どうにかなる」
小池真理子の短編集のうち、「どうにかなる」と「贅肉」に猫の描写がある。
「どうにかなる」の主人公は松子という老婆。住み込みの家政婦をしていた頃、怪我をして解雇された。アパートに一人暮らしだったが、大家が変わって出て行かなくてはならなくなった。今は二年間という期限つきで福祉施設宿泊所に住む。時々、バスや電車に乗ってあるいは徒歩で遠出することもある。
二年の期限が近づいてきたので、施設職員の中で一番親切な花村が心配してくれている。
ある日、山手線に乗っていると、うたた寝をしてしまい、どことも知れない駅で降りた。
小さな公園でスエという老女が猫を探している声を耳にする。気難しいというスエとも意気投合し、彼女の家に招かれる。タマという猫も帰って来た。
「『あたしも昔、猫を飼っていたことがあるの』松子は言った。(略)『タマは赤トラだけど……あんたが飼ってた猫は?』 『三毛だった』と松子は言った。『メスの三毛。きれいな猫だった』 『三毛猫は全部、メスだわよ』老女はふてくされたように言った。『オスのミケは長生きできないから』(略)『あら、タマ』とスエの明るい声が響いた。『遅いお帰りだこと』(略)スエがしゃがみこみながら、虎毛の大きな猫の背を撫でている。(略)時折、猫の長く柔らかな尾が、スエの身体に巻きつくようにして伸びてくる。『おやすみ、タマ』とスエは言った。『また、明日ね』 にゃおん、と猫が澄んだ声で鳴き、暖かい夜風がすうっと部屋の中に入って来た。」
ここまでは、寂しい老女二人の心温まるお話かと思われるだろう。ところが。
小池氏は簡潔で美しい文章でリアルな人間の生活を描写する。この短編集は御主人の藤田氏の解説。夫婦同時に直木賞候補になったこともあるという。是非、読んで頂きたい。
「どうにかなる」の主人公は松子という老婆。住み込みの家政婦をしていた頃、怪我をして解雇された。アパートに一人暮らしだったが、大家が変わって出て行かなくてはならなくなった。今は二年間という期限つきで福祉施設宿泊所に住む。時々、バスや電車に乗ってあるいは徒歩で遠出することもある。
二年の期限が近づいてきたので、施設職員の中で一番親切な花村が心配してくれている。
ある日、山手線に乗っていると、うたた寝をしてしまい、どことも知れない駅で降りた。
小さな公園でスエという老女が猫を探している声を耳にする。気難しいというスエとも意気投合し、彼女の家に招かれる。タマという猫も帰って来た。
「『あたしも昔、猫を飼っていたことがあるの』松子は言った。(略)『タマは赤トラだけど……あんたが飼ってた猫は?』 『三毛だった』と松子は言った。『メスの三毛。きれいな猫だった』 『三毛猫は全部、メスだわよ』老女はふてくされたように言った。『オスのミケは長生きできないから』(略)『あら、タマ』とスエの明るい声が響いた。『遅いお帰りだこと』(略)スエがしゃがみこみながら、虎毛の大きな猫の背を撫でている。(略)時折、猫の長く柔らかな尾が、スエの身体に巻きつくようにして伸びてくる。『おやすみ、タマ』とスエは言った。『また、明日ね』 にゃおん、と猫が澄んだ声で鳴き、暖かい夜風がすうっと部屋の中に入って来た。」
ここまでは、寂しい老女二人の心温まるお話かと思われるだろう。ところが。
小池氏は簡潔で美しい文章でリアルな人間の生活を描写する。この短編集は御主人の藤田氏の解説。夫婦同時に直木賞候補になったこともあるという。是非、読んで頂きたい。
by suezielily
| 2013-08-20 18:36
| 猫書籍