猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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武田泰淳の映画バラエティ・ブック
武田泰淳の「タデ食う虫と作家の眼」を借りた。
表紙の武田泰淳の写真に猫が写っているのと、泰淳が書いた映画評が面白いのに惹かれてのことだった。
編者の高橋俊夫氏によると、
「この本は、武田泰淳の『私の映画鑑賞法』(朝日新聞社・後に潮出出版社より復刊)をベースに、全集でも読めない映画の撮影現場ルポ、(略)
武田泰淳の映画に関する一種のバラエティ・ブックを目指しました。」ということである。
以下、「詩人の映画 『オルフェの遺言』『恋や恋、なすな恋』『エル・シド』『剣と十字架』『生きる歓び』
『フラワー・ドラム・ソング』『お吟さま』」より引用。
「フランス詩人ジャン・コクトーの『オルフェの遺言』には、いささか退屈した。(略)
だが、いい年をした老詩人(俳優としてもスタイルがいい)が、他人はともかく自分だけは、ゆっくり歩いているだけで意味があるんだぞ、といいたげな、いい気なところが、気にくわなかった。
いくら頭が良くて、人気者のしゃれ男だって、年寄は年寄なのだ。(略)
ところが、老先生用いるガイコツ仮面は、ひらいたりしぼんだりする花の映像もそうであるが、象徴的なんだから正しいんだぞ、とはじめから決めてかかっている。(略)
日本におけるアート・シアターがうまく繁栄することを、ぼくらは望んでいる。
『尼僧ヨアンナ』の興行が成功したときも、うれしかった。
あつまる観客が上品で、礼儀正しいのも、よろこばしい。
二回目にコクトーを選んだことだって、まちがいとはいえない。
しかし、首脳部の交代がはげしく、ストが続発したり、
転業者がふえたりする不利な条件の下で、芸術作品を生み出そうと悪戦苦闘している、日本各社の映画人の苦労を思えば、
あんまりフランス詩人の『天才』を、ほめたたえたりしてはいられないのである。
外国映画は、世界歴史、世界地理の勉強になる。
『エル・シド』『剣と十字架』『生きる歓び』『フラワー・ドラム・ソング』。
いずれも、新知識を得ることができた。」
まあー、手厳しいですな、コクトー先生に。
「日本におけるアート・シアター」というのは岩波ホールのことだろうか。
以下、「映画批評のこと」より。
「 映画が発明されたころには、鑑賞したり批評したりするゆとりはなくて、ひたすら驚かされるばかりにちがいない。
舞台とも絵画とも異なった、まったく新しい『何ものか』が出現してしまって、今までの楽しみの範囲が急にひろがったばかりでなく、楽しますものと楽しまされるものとの関係が、がらりと変わってしまったのである。
どのような問題が、スクリーンに動く絵から発生してくるか何人も予想することはできなくて、とんでもない機能が疾走しだしたという息苦しさと身ぶるいが、ただよったにちがいない。」
(「キネマ旬報」昭和三十三年六月)
現代の私は、既に映画というものが生れた時からあった。
発明された頃の驚きとか想像するしかないのだけれど。
たとえば、横溝正史原作の映画などで、真犯人か重要参考人が昔若い頃、旅芸人でした、みたいな筋の作品がある。
大抵若いヒロインの出生の秘密に関わっている。
それを金田一探偵が探し当ててその証拠フィルムを見る…といった場面。
あったよね?
広い壁か白い大きな布を広げられる集会所で、町じゅうの、村じゅうの人々が集まって…みたいな。
フィルムが写すモノクロの映像の中の人々や動物、車などは現代から見ると早回しのような動きになってしまって。
現存する当時のフィルムは、ひどく保存状態が悪くて、投射する毎に写らない画面があって。
音声も入っていないから弁士という職業が成り立っていて。
泰淳がこれを書いた頃も既に何十年か経っているのだが、年齢から言って、「ひたすら驚かされるばかり」の頃も少しは知っておられるのかな…
幼い頃の記憶か父や祖父の世代の人に聞いて、何となくその気分はご存知なのだろう。
それを、上に引用した文は見事に言い当てておられると思う。
もう、唸るしかない。
表紙の武田泰淳の写真に猫が写っているのと、泰淳が書いた映画評が面白いのに惹かれてのことだった。
編者の高橋俊夫氏によると、
「この本は、武田泰淳の『私の映画鑑賞法』(朝日新聞社・後に潮出出版社より復刊)をベースに、全集でも読めない映画の撮影現場ルポ、(略)
武田泰淳の映画に関する一種のバラエティ・ブックを目指しました。」ということである。
以下、「詩人の映画 『オルフェの遺言』『恋や恋、なすな恋』『エル・シド』『剣と十字架』『生きる歓び』
『フラワー・ドラム・ソング』『お吟さま』」より引用。
「フランス詩人ジャン・コクトーの『オルフェの遺言』には、いささか退屈した。(略)
だが、いい年をした老詩人(俳優としてもスタイルがいい)が、他人はともかく自分だけは、ゆっくり歩いているだけで意味があるんだぞ、といいたげな、いい気なところが、気にくわなかった。
いくら頭が良くて、人気者のしゃれ男だって、年寄は年寄なのだ。(略)
ところが、老先生用いるガイコツ仮面は、ひらいたりしぼんだりする花の映像もそうであるが、象徴的なんだから正しいんだぞ、とはじめから決めてかかっている。(略)
日本におけるアート・シアターがうまく繁栄することを、ぼくらは望んでいる。
『尼僧ヨアンナ』の興行が成功したときも、うれしかった。
あつまる観客が上品で、礼儀正しいのも、よろこばしい。
二回目にコクトーを選んだことだって、まちがいとはいえない。
しかし、首脳部の交代がはげしく、ストが続発したり、
転業者がふえたりする不利な条件の下で、芸術作品を生み出そうと悪戦苦闘している、日本各社の映画人の苦労を思えば、
あんまりフランス詩人の『天才』を、ほめたたえたりしてはいられないのである。
外国映画は、世界歴史、世界地理の勉強になる。
『エル・シド』『剣と十字架』『生きる歓び』『フラワー・ドラム・ソング』。
いずれも、新知識を得ることができた。」
まあー、手厳しいですな、コクトー先生に。
「日本におけるアート・シアター」というのは岩波ホールのことだろうか。
以下、「映画批評のこと」より。
「 映画が発明されたころには、鑑賞したり批評したりするゆとりはなくて、ひたすら驚かされるばかりにちがいない。
舞台とも絵画とも異なった、まったく新しい『何ものか』が出現してしまって、今までの楽しみの範囲が急にひろがったばかりでなく、楽しますものと楽しまされるものとの関係が、がらりと変わってしまったのである。
どのような問題が、スクリーンに動く絵から発生してくるか何人も予想することはできなくて、とんでもない機能が疾走しだしたという息苦しさと身ぶるいが、ただよったにちがいない。」
(「キネマ旬報」昭和三十三年六月)
現代の私は、既に映画というものが生れた時からあった。
発明された頃の驚きとか想像するしかないのだけれど。
たとえば、横溝正史原作の映画などで、真犯人か重要参考人が昔若い頃、旅芸人でした、みたいな筋の作品がある。
大抵若いヒロインの出生の秘密に関わっている。
それを金田一探偵が探し当ててその証拠フィルムを見る…といった場面。
あったよね?
広い壁か白い大きな布を広げられる集会所で、町じゅうの、村じゅうの人々が集まって…みたいな。
フィルムが写すモノクロの映像の中の人々や動物、車などは現代から見ると早回しのような動きになってしまって。
現存する当時のフィルムは、ひどく保存状態が悪くて、投射する毎に写らない画面があって。
音声も入っていないから弁士という職業が成り立っていて。
泰淳がこれを書いた頃も既に何十年か経っているのだが、年齢から言って、「ひたすら驚かされるばかり」の頃も少しは知っておられるのかな…
幼い頃の記憶か父や祖父の世代の人に聞いて、何となくその気分はご存知なのだろう。
それを、上に引用した文は見事に言い当てておられると思う。
もう、唸るしかない。
by suezielily
| 2013-09-14 23:33
| TVドラマ、movie