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三島由紀夫「幸福号出帆」

 三島由紀夫の「幸福号出帆」は1955年6月から11月にかけて、読売新聞にて発表され、翌1956年に刊行。
三島由紀夫「幸福号出帆」_e0265768_15572248.jpg




ちくま文庫HPにあるあらすじより。
「密輸に手を染め、外国へ高飛びせざるを得なくなった混血の美青年敏夫と異父妹の三津子。二人の幸福号とは?恋とスリルとサスペンスに満ちたエンターテインメント。フランス伝統の物語形式を積極的に取り入れた実験小説でもある。」
角川書店のHPより、「立ち読み」ができる。
本文より、抜粋。
「吉報いたる

 梅雨入り前のNデパートの屋上は、すこし湿気を含んだ風と、いぶしたような日ざしにさらされて、ただ屋上庭園だけを目ざして来る、まるで買物なんぞしない客で、活気を呈している。(略)
 たちまち、きれいな女声合唱の声が起る。(略)自分もソプラノを歌っている指揮者は、たびたび歌を中断して注意を与えた。」
Nデパートの女声合唱団の指揮者が、ヒロインの三津子である。早世した三島の妹である平岡美津子がモデルと思われる。
小説の冒頭部分が「立ち読み」できるが、旧字体を新字体に書き換えてある。
 以下は、旧字体のままの新潮社の全集より、猫が登場する描写。
「三津子がイタリア亭へゆくと、(略)房子が、すばらしいシャム猫を抱いて現はれた。(略)猫は音もなく、房子の腕をすりぬけて、その長椅子のはじにうづくまつた。(略)
房子はシャム猫を膝に抱きあげて、
『どう? いい猫でせう』
 猫は、信じられないほど柔らかな毛並に、全身の薄茶いろが四つ肢だけ焦茶に染まり、目は深いブダウ色にかがやいて、イウウツそうに、房子のスカアトの上に前肢をそろへてゐた。三津子が見ると、ツンと顔をそむけた。
『あんまり立派で猫ぢやないみたい』
『それはそうよ。血統書があるんですもの。(略)血統書つきの猫をもらつたのははじめてだわ。(略)』
 三津子は仕事の話が急に猫の話になつたのには面食らつたが、ええ、と言った。
(略)血統書は、(略)アメリカの愛猫協会のマークがついて、父母、祖父母、曾祖父母といふ具合に、その所有者の名と猫の生年月日が英語で書いてあつた。(略)
所有者名と猫の生年月日だけがタイプで打たれてゐる、そのタイプの英字へ目を近づけた。
(略)
『ミス・ブリティッシュローズ  一九二〇年一月七日』(略)
『(略)猫つて、十二月や一月に生まれるもんでせうか?』
(略)シャム猫は、部屋の中央のテーブルの上へ飛び移り、さしのべた前肢をなめて、お化粧をはじめた。」
「『すてきなシャム猫がゐたわ』
三津子は(略)シャム猫の血統書の話をした。兄は(略)猫の持主の名が実は船の名だ、といふ話になると、キッとした顔をあげた。
『(略)猫の生年月日が、入港の日附だといふんだな』
『(略)房子のやつ、どうして今まで猫をかぶつてたもんだらう』
『かぶつていた猫の血統書を見せてくれたのよ』」
 三島作品の中では、軽めに読めて、しかも良く練られた作品だ。
三島作品の書評を書いている方のサイトのなかで、「近年出版社が、三島作品を次々と復刻させているが、現代作家の新作よりも三島の三流作品のほうがずっと面白い、と判断しているのだろう」といったようなことを書いておられた。三流かどうかはともかく、おっしゃるとおり!
 三島文学のなかで猫が登場する作品(「午後の曳航」だけは恐ろしくて、読めない…)はそう多くはないのだが、この作品での猫描写はちょっと珍しい。シャム猫というのが、また謎めいて、お洒落だ。
 1980年(昭和55年)11月15日封切された映画版は、 斎藤耕一監督。脚本が清水邦夫、というのはなかなかだ。キャストは、山路三津子:藤真利子、敏夫:倉越一郎、正代:加藤治子、ゆめ子:岸田今日子、山岡房子:江波杏子、コルレオーニ歌子:高峰三枝子、張:岡田英次、富田次郎:光田昌弘、18号:森本レオ、一丸:林ゆたか、ケン:藤村泰介、船長:佐藤允、萩原達:中尾彬、伊藤広:大泉滉、大川順:五十嵐喜芳、ロック・グループ:将軍。
加藤治子、岸田今日子、江波杏子、高峰三枝子という、当時でもヴェテラン女優陣が興味をそそる。
佐藤允さんは近年、亡くなられた。非常に印象的な風貌の、個性の強い俳優であった。岡田英次さんは、若ければ敏夫役を演じるべきであったろうに。
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by suezielily | 2016-02-08 15:32 | 猫書籍