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スタインベック「怒りの葡萄」

 怒りの葡萄:The Grapes of Wrath は、アメリカ合衆国の作家ジョン・スタインベック。
新潮文庫 、大久保 康雄訳。



スタインベック「怒りの葡萄」_e0265768_15503463.jpg





原文のあるサイト発見。
どうも中高生の宿題お助けします、というサイトのようだ。サリンジャーもある。
sparknotes The Grapes of Wrath Important Quotations Explained
http://www.sparknotes.com/lit/tess/quotes.html
http://www.sparknotes.com/lit/grapesofwrath/quotes.html 

新潮文庫のジョン・スタインベック「怒りの葡萄」(’The Grapes of Wrath’ by John Steinbeck)は大久保康雄訳。
野崎孝訳もあった。

以下、主な登場人物。
「Tom Joad 次男、Ma Joad 母親、Pa Joad 父親 名前はトム、Uncle John Joad 父の兄、
Jim Casy 説教師、Al Joad トムの弟、Rose of Sharon Joad Rivers 「シャロンのバラ」ことローザシャーン。トムの妹、Connie Rivers コニー。ローザシャーンの夫、Noah Joad ジョード家の長男、
Grampa Joad、 Granma Joadトムの祖父母。Ruthie Joad ルーシー、トムの妹 Winfield Joad ウインフールド、ジョード家の末っ子。Jim Rawley 国営キャンプの管理人 ジョード一家には当初から好意的
Mr. Wainwright、Mrs. Wainwright アギーの両親。Aggie Wainwright アルの恋人。」
 
ノアはウィキ日本語版では従兄弟と書かれているが? 長男ではないのか?
原題がアンガーではなくて、Wrathだったのね。
 書評を書いておられるブロガー様に共通する意見は、主人公はトムらしいのだが(特にヘンリー・フォンダ主演の映画版)、真の主役はトムの母親。
映画でも演じた女優がアカデミー賞助演女優賞を受賞している。
 
本棚には下巻しかなかったので、とりあえず数年ぶりに読んでみる。

初めて読んだ当時も、一気に読んだ覚えがある。
中篇の「二十日鼠と人間」と比べて長いのでどうかな、と思ったが気がついたら朝方であった。
「二十日鼠と人間」も登場人物の多さにも関わらず、人物造形の確かさにうなったが、本作は更に多い人間達を、鮮やかに書き出している。
 
ウィキを検索すると、題名の意味はヨハネ黙示録によるという。
「また、私は見た。見よ。白い雲が起こり、その雲に人の子のような方(救世主を指す)が乗っておられた。頭には金の冠を被り、手には鋭い鎌を持っておられた。
すると、もう一人の御使いが聖所から出て来て、雲に乗っておられる方に向かって大声で叫んだ。「鎌を入れて刈り取ってください。地の穀物(神に選ばれた人間の比喩)は実ったので、取り入れる時が来ましたから。」
そこで、雲に乗っておられる方が、地に鎌を入れると地は刈り取られた。
また、もう一人の御使いが、天の聖所から出て来たが、この御使いも、鋭い鎌を持っていた。
すると、火を支配する権威を持ったもう一人の御使いが、祭壇から出て来て、鋭い鎌を持つ御使いに大声で叫んで言った。「その鋭い鎌を入れ、地の葡萄(神に選ばれなかった人間の比喩)の房を刈り集めよ。葡萄は既に熟しているのだから。」
そこで御使いは地に鎌を入れ、地の葡萄を刈り集めて、神の激しい怒りの大きな酒舟に投げ入れた。
その酒舟は都の外で踏まれたが、血は、その酒舟から流れ出て、馬のくつわに届くほどになり、千六百スタディオンに広がった。
— ヨハネの黙示録 第14章(天の戦い、地における獣の増大、地の刈り入れ:鎌が地に投げ入れられる)」
 
以下、原文より抜粋。
Chapter 19
「’How can you frighten a man whose hunger is not only in his own cramped stomach but in the wretched bellies of his children? You can't scare him – he has known a fear beyond every other.’」

全編を貫く一文である。

飜訳文より、抜粋。第二十六章、文庫本の下巻263p。

「『家じゅう七人が働いて、それが一度の夕食代だ。』(略)
『ジャガイモとパン、コーヒー、これで一ドルきっちりだ』
(略)彼は十セントをポケットからとりだすと、それをレジスターのなかへ音高く落としこんだ。(略)小袋を引きだし、(略)いくらかの砂糖を流しこんだ。(略)
『(略)伝票をもってきたら、(略)十セントを返してもらうからね』(略)
『(略)もしおまえさんが困ったり、(略)貧しい人たちのところへ行きなさるがいいだよ。助けてくれるのは、あの人たちだけだからね。(略)』
(略)小柄な男は、(略)彼女の姿を見送った。
ふとったぶち猫が勘定台の上に飛びあがり、大儀そうに、そっと彼の方に近よった。猫は男の腕に横腹をこすりつけた。彼は手を伸ばして猫を頬に引きよせた。猫は、ごろごろ気持よげに咽喉を鳴らした。尾の先が前後にぴょこぴょこ動いた。」
猫がこのように表現されるとは、他の文学作品では見たことがない。
ジョードのおかみさんにとってこの農場の食料品店のおやじは意地悪なのだろうが、彼もやはり雇用されている身の上。砂糖を内緒で貸し与えたことがバレたら、解雇されかねない。
飼い猫(単に鼠除けに置いているだけかもしれぬが)には優しい飼い主なのであった。
大佛次郎が、忠臣蔵ものを書いているが、その中で吉良側の家老が、いつも膝に猫を乗せているという設定にしているそうだ。
その話を思い出した。
ジョード家の末っ子姉弟が、裕福になったら犬や黄色い猫を飼いたいと思っているという描写もある

 以下、Chapter 5の原文より。
「'Wherever they’s a fight so hungry people can eat, I’ll be there. Wherever they’s a cop beatin’ up a guy, I’ll be there. If Casy knowed, why, I’ll be in the way guys yell when they’re mad an’—I’ll be in the way kids laugh when they’re hungry n’ they know supper’s ready. An’ when our folks eat the stuff they raise an’ live in the houses they build—why, I’ll be there. See? God, I’m talkin’ like Casy. Comes of thinkin’ about him so much. Seems like I can see him sometimes.'」
 映画版は何しろ主演がヘンリー・フォンダ。トムは最後の50ページほど、登場しなくなるのだが大きく脚色されているようだ。
原作の素晴らしいラストも当時の(今もだろうか)ハリウッドでは撮影できかったのだろう、ある場面だからして。


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チャーリーとの旅

ジョン スタインベック / ポプラ社


by suezielily | 2016-02-26 10:19 | 文学