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カズオ・イシグロ「遠い山なみの光」


カズオ・イシグロの「遠い山なみの光」をハヤカワ文庫版で読んだ。原題は”A Pale View of Hills”.
小野寺健訳、1982年発行。早川書房の文庫発行は2001年。
以下、本文より抜粋。




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第一章
10-11p
「 そのころには、すでに最悪の時期はすぎていた。
朝鮮で戦争がおこなわれていたのでアメリカ兵の数の多さはあいかわらずだったが、長崎では、(略)世の中が変わろうとしている気配があった。
 わたしは夫と、市の中心地から市電ですこし行った、市の東部にあたる地区に住んでいた。(略)
戦前には(略)だがそのうちに原爆が落ちて、あとは完全な焦土と化したのだった。すでに復興が始まっていて、(略)」
20-21p
 「 家の中はきちんと片づいていたけれども、(略)全体に陰気くさいのだった。(略)
大きな猫が畳みにうずくまっていた。(略)
万里子は猫を撫でていた手を止めて、顔を上げた。
(略)しばらくわたしを見ていたと思うとまた猫を撫ではじめた。(略)
万里子がだしぬけに『この猫、子猫が生まれるの』と言った。(略)
『おばさん、子猫ほしい?』
『ありがとう、万里子さん。考えてみるわ。(略)』
『どうして子猫飼わないの? よそのおばさんは一匹ほしいって言ってたわよ』
(略)万里子は黙りこむと、(略)また猫を撫ではじめた。」
22p
「(略)佐知子は(略)お茶をつぎはじめた。
『この辺には野良猫が多いのよ』と彼女は言った。
『子猫も、生きていけるかどうか』
『(略)あの猫も万里子さんがこの辺で拾ってきたの?』
『いいえ、あれは前にいたとこから連れてきたの。わたしは捨ててきたかったんだけど、万里子が承知しなかったの』」

第二章   
28p
「 当時のわたしは、また中川の辺りへ戻ることがあると、(略)複雑な気持ちに襲われた。その辺は坂が多いのだが、(略)
藤原さんは母の親友の一人で、(略)藤原さんのうどん屋は繁華街の横丁にあった。」

第三章
57p
「(略)その隅に何匹もかたまっている黒い子猫が、わたしたちが帰ってくると目をさましてそわそわと動きはじめた。
子猫たちが畳に爪をたてるカリカリという音がした。」
59p
「(略)子猫が二匹、佐知子が座っているほうへそろそろ近づいてきた。」
62-63p
「『万里子はアメリカへ行っても大丈夫なのに、どうしてそれを信じてくれないの。(略)』
(略)『フランクは、わたしだって勤めればいいって言ってるわ。向こうではそういうことができるのよ。』(略)
 佐知子は、二匹の子猫がそばの畳を引っ掻いているのをじっと見ていた。(略)
佐知子は子猫から目を放さない。(略)『(略)フランクが車で迎えに来るわ。
今週の末までには船に乗らなくちゃならないの』(略) 
子猫が佐知子の浴衣の袖を引っ掻いていた。
彼女が手の甲でピシャリと叩くと、その小さな生き物はあわてて畳の上を逃げていった。」
106―107p
「 藤原さんは息子の和夫の話をしていて、よく顔を曇らせることがあった。(略)
『でも和夫さんのお気持ちもわかるわ。道子さんのこと、あんまりお気の毒でしたもの。(略)』(略)
『でも、それはもう昔のことよ。わたしたちはみんな、忘れようとしたじゃないの。あなただって、悦子さん、一時は立ち上がれないほどだったわ。でも、切り抜けたでしょ』」

別の個所だが、英文の原文より抜粋。

「“The English are fond of their idea that our race has an instinct for suicide, as if further explanations are unnecessary;”
Chapter 1, Page 10
“an unmistakable air of transience there, as if we were all of us waiting for the day we could move to something better.”
Chapter 1, Page 12

“as with a wound on one's own body, it is possible to develop an intimacy with the most disturbing of things.”
Chapter 3, Page 54

“it whenever people want to be selfish, whenever they want to forget obligations."”
Chapter 4, Page 65

“created by the gods, for instance. How we as a nation were divine and supreme. We had to memorize the text book word for word. Some things aren't such a loss, perhaps."”
Chapter 4, Page 66

“Consequently, my picture of her present life is built largely upon speculation.”
Chapter 6, Page 94

“I can see now, with hindsight, how typical this was of the way Jiro faced any potentially awkward confrontation. Had he not, years later, faced another crisis in much the same manner, it may be that I would never have left Nagasaki.”
Chapter 8, Page 126
“A game isn't won and lost at the point when the king is finally cornered. The game's sealed when a player gives up having any strategy at all. When his soldiers are all scattered, they have no common cause, and they move one piece at a time, that's when you've lost."”
Chapter 8, Page 129 」


「訳者あとがき」より、抜粋。二〇〇一年七月に書かれたもの。
267―268p
「初めは、作者がほとんど日本語を読めない以上、人名はカタカナ書きにしようと考えたのだが、思いがけず作者から、ある人物の名にある漢字は避けて欲しいという連絡があって、漢字表記を予想していることが分かり、(略)漢字表記に踏み切った。」

 池澤夏樹の解説の「日本的心性からの解放」より、抜粋。
270p
「 この話の中心に位置するのは悦子と佐知子の仲。(略)
悦子は、その景子を身ごもっていた長崎時代にたまたま知り合った佐知子という女の当時の思いにようやく共感できるようになっている。」
273―274p
「 (略)この小説には、日本人どうしの会話が英語で書かれているというおもしろい問題がある。作者は日本生まれだが幼くして英国に渡り、日本語を母語としては習得はしなかったらしい。つまりこれは英国人がそれらしいと信じて書くところの日本人の会話なのである。」
「 小野寺氏はおそらくイシグロの父母の世代にあたる。イシグロが父母から学んだ戦後間もない日本の日本語を飜訳を通じて再現するには最適の訳者だったに違いないし、その訳業は相当に創造的な、作家的なものだったに違いない。
 しかし、実をいえば、英語のままでも佐知子はくっきりとした像を結んでいるのだ。」

 
 訳者の小野寺氏と、池澤氏の解説まで含めて一つの作品だと思う。
英文の原文を読みたくなった。
小野寺氏の飜訳については、長崎在住の女性たちの言葉遣いが標準語であることが気になる。
東京出身の佐知子、万理子母娘はともかく、地元出身の女性たちは長崎弁を話していないと不自然ではないか、と地元民としては思う。
ただ、悦子や知人のうどん屋の女性(原爆で長男以外の全てを失った、市内でも裕福な家柄だったという)も、中流の生まれ育ちなのでそういう話し方でも不自然ではないのかな、という気もする。

池澤氏は河出書房新社で世界文学全集を個人編集しておられる。
イシグロ作品は、新潮社の世界文学全集、イギリス文学編のなかにあった短篇を読んだきりであったので、これが私にはほぼ初読ということになる。
 
 わずか五歳でご両親と長崎を出て、イギリスで生活することになったということである。それにしては長崎市内の情景が、少なくとも中学生まで過ごしていて、確かな記憶が無いと描けないような描写だ。
勿論、創作の部分が多いのだろうけど。

 中川町には、短大時代に住んでいたことがある。
イシグロ氏の故郷だということである。
その短大は現在、県内の別の町に移転し、しかも女子短大ではなく共学の四年大学になっている。
自分が通っていた学校がもはや存在しない、ということも併せてこの作品には強く共感する部分が大変多い。
浜屋デパート、平和公園の平和記念像(一九五五年建立なので、カズオ少年はその頃はまだ長崎在住だったのだろうか)。
悦子と夫の住むアパート界隈には、どうやら三菱重工に勤務する家族が多く住んでいたということ。
稲佐山には船で渡っていかなくてはならなかったこと。
ロープウエイは当時、既に架けられていたようだ。稲佐山で悦子と佐知子、万里子母娘がたまたま出会う中年女性は、夫が三菱の重役であり、万理子と同年代の息子ともどもそれを自慢しているふしがあること。
アメリカ人の女性を案内しているが、彼らよりも佐知子の英語が堪能であることを、男の子が面白く思っておらず、万里子に対して攻撃的な態度に出て手痛いしっぺ返しを喰う。この場面が大変スリリングであった。
 
 主人公の悦子よりも、悦子と親しかった佐知子よりもその娘の万理子のことが気になった。
万理子に比べて、佐知子も悦子も猫に対して冷淡である。
大変ショッキングな場面があるのだが、まさか渡英する前にイシグロ夫妻が同様のことをやったのではないか…もしそうなら、幼いカズオ少年に強烈なトラウマとなっていたのでは。
 
悦子がのちに取る行動については、何も具体的な描写が無い。
それを物足りなく思う読者もいるかもしれないが、私は長崎市の描写に強く惹かれたので、別に無くてもいいかな、とも思う。
イシグロ家族の長崎での生活とともに、ミステリアスな要素が興味深い。

I read Kazuo Ishiguro's ”A Pale View of Hills”.
Very impressive.

I am amazed he discribed Nagasaki in details 1950's yet he moved to England when he was just 5 yrs old...
Also I was in Nakagawa-cho when I went to women's jr. college, he and his parents was living in Nakagawa, so I was very impressed.

the discription of cats was cruel... I wonder if his parents did the same thing before going to England...
Of course the story of Etsuko, Sachiko and Mariko, the daughter of Sachiko, who is unfriendly to other kids, but loved the cats, was fiction,
however, I was really impressed because I was in Nakagawa and I have visited Nagasaki so many times even after the graduation,
and I love the cats now...

I want to complete to read all the Mishima works, but I know the discription of cats of "The Sailor Who Fell from Grace with the Sea" was cruel...so I never read it,
but I had read Ishiguro's one! cause i did not know that! oh,my


遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)

カズオ イシグロ/早川書房

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A Pale View of Hills

Kazuo Ishiguro/Faber & Faber

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by suezielily | 2018-06-05 16:46 | 猫書籍