猫を題材にした小説随筆や猫好き作家をご紹介
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ランペドゥーサ「山猫」
ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサの「山猫」を読んだ。 小林惺訳、岩波文庫。
以下、本文より抜粋。
「第Ⅱ章 1860年8月」より。
118-120p
「『(略)俗人立ち入り禁止の修道院だったのです。(略)修道女の一団が、(略)みんな皺くちゃな婆さんばかり、(略)
いそいそと殉教(?)の準備をなさっているではありませんか。(略)好漢タッソーニが叫びました。《皆さん、なにもいたしません。(略)
もっとも見習い修道女たちに会わせてくださるんでしたら、戻って参りますけど》。』
(略)アンジェリカは、(略)笑った。(略)
『皆さん、本当に面白い方ばかりですねぇ。
私も御一緒したかったくらい』。タンクレーディは(略)
『シニョリーナ、もしあなたがいらっしゃったら、なにも見習い修道女を待つ必要はありませんでしたよ』(略)
その笑い声はいちだんとトーンを高め、けたたましく響きわたった。
その機会に、一同は食卓から腰を上げた。タンクレーディは(略)
コンチェッタが顔を紅潮させ、瞼に小さな涙の粒を二つ浮ばせているのを見た。」
「第Ⅵ章 1862年11月」より。
333-336p
「 『公爵さま』アンジェリカは言った。『ここにいらっしゃることを知って、(略)
もう一つお願い事もあって参りました。(略)』(略)
『あたくし、次のマズルカをご一緒に踊っていただきたいんです。(略)
公爵さまが素晴らしい踊り手であることは存じております』。(略)
しかしマズルカと聞いて(略)絶えず足を踏み鳴らし、(略)
あの勇壮なダンスは、彼の関節ではもう無理だ。(略)
『ありがとう、アンジェリカ。(略)その次のワルツにしてくれないか』
『ねえ、タンクレーディ、(略)ねえ公爵さま、この人ときたら、(略)妬いていますのよ』
『こんなに素敵で垢抜けた伯父さんがいたら、焼き餅をやくのは当然だよ。(略)』(略)
アンジェリカ、ドン・ファブリーツィオのカップルは鮮やかな印象を与えた。(略)
彼女は喋っていた。
その生まれつきの虚栄心は、強くて粘っこい野心同様、充分に満足させられた。(略)
『私は関係ない、わが娘よ。みんな君自身の力なのだ。』
それは本当だった。タンクレーディが誰であろうと、財産と一緒になった彼女の美しさの誘惑には克てはしなかっただろう。(略)
コンツエッタの誇り高く、心敗れた表情の眼を思いやった。(略)
おそらくタンクレーディに促されて、ほかのカップルは踊るのをやめ、二人を眺めていた。」
原作も大層面白かった。映画を久々に見てから、図書館から借りて読んだのだが、原作から脚色、演出された部分はほぼ原作とおりに再現されている。
映画で見るよりも印象が強かったのは、公爵の飼い犬であった。
はて、映画でそんな忠犬が登場しただろうか。それはともかく。
また、原作のラストが公爵やタンクレーディ夫妻の終焉ではなくて、公爵の娘たち、特にコンツエッタの描写だったことも意外だった。
イタリア、特にシチリアとの関係が分からないので完全に理解したかというとそうではないけれども、イタリアは意外と、植民地支配が少なかったとか。
国土が欧州ではそう広大ではないことを思えばそうなのか、とも思う。
登場人物の名前は重要だ。
タンクレーディという特徴ある名前が彼の周辺の人々から呼ばれるとき、またそれを演じるアラン・ドロンが応えるとき。
没落しつつある大貴族のただ一人の希望の星、嫡男や娘たちではなくて公爵の甥っ子。
彼らの声に、名前の響きにその希望がこもっていた。
何もかも具えてはいるが、無いのは金だけ。
それに引け目を感じることもなく颯爽と、誇り高く美しい男。
それを補うであろう、大ブルジョワの娘、誰よりも美しいがちょいと品性に欠ける、しかし恐ろしく頭のいい。
周辺の雑音を、公爵と皆の前で踊ってみせることでシャットアウトしたのだ。
公爵と未来の夫を、捻じ伏せたのだ。
ランカスターと、ドロンとカルディナーレの完璧な絵ヅラは映画の奇跡だ。
勿論、ヴィスコンティ監督の他の作品の、特に「地獄に堕ちた勇者ども」の豪華キャストの、一堂に会した姿も圧巻ではあるけれども。
英語題は「The Dammed」、英国のパンクバンドがその映画からバンド名を取ったのかは、未確認。
分かる方、ご教示を。